音を失ったのならば(連載)(シズイザ)

 音を失ったのならば

 2・えんじ色の幸せ

  1. 。+。+。+。+。+。

わからなかった。
新羅は何も言わなかったし、
ヘンな動言をするし。
まったくもってわからない。

  1. 。+。+。+。+。+。


今、俺は池袋にいた。
あの後すぐに仕事が入り、
急いで池袋へ向かった。
(もちろん、依頼者が、池袋でしか駄目だと言っていたから。)
仕事では、声が出せなかったものの、仕事には差し支えなかった。
まぁ、声が出ないからといって、あまり不便なことはないと思うs・・・

「!!!」

ゴガシャァアアアアアアンッ


危ない危ない、すっかり忘れていた。
此処は彼の庭(?)だったね。
そして、先ほどまでしっかりと役割を果たしていたポストが、
俺の鼻先を擦れそうなほどスレスレを通っていった。
こんなことができるのは、
俺の知っている奴。しかも今一番一番…………




恋焦がれている彼しかいない。



「いーざーやーくーん」
ほら、俺の大好きな声が俺の名前を呼ぶ。
「池袋には二度と来るなっつったよなぁ。
 臨也君よぉー?」
あはは、その台詞聞きあきたよシズちゃん。
俺はその言葉を口から出さなかった。
否、出せなかった。
だって今


俺は音を失っているのだから



俺は、その言葉の代わりに、
うざったいくらいの笑みを彼にむけた。
またキレるかなーという予想は、見事に的中。
案の上、シズちゃんは顔に血管を浮かばせ、
「うぜえんだよおおおおおおおお!!!!」
と叫ぶと、身近にあった標識をアスファルトから引き抜くと、
勢いよく俺めがけて振りまわ……さず、
そのまま投げつけてきた。
まぁ、そんなものは軽々とよけられるから別に良いけど。
その考えとうり、俺はその攻撃を軽々とよけた。
そのまま高く飛び上がり、近くのビルの三階のベランダに着地した。
「オイ、降りてこいよ。」
俺はその言葉を黙って聞いていた。
黙って聞くしかなかった。

(彼と…言い合いでもいい。何でもいい。)
(ただ、ただ……)







彼と、話したい………。






いつもは、憎まれ口をたたくしかできない己の口。
いつも、いつも、いつも、いつも………
こんな口、無くなればいいと思っていた。
ホントは、ね。
ホントは…素直に、しゃべりたかった。
ホントは嫌いじゃないんだよ?
ホントは死ね、なんて思ってないんだよ?
ホントはね





大好きなんだよ?













(君は知っているかい?)
(ある少年の 不器用で可哀相な)
(悲恋歌を)


 えんじ色の幸せ

(少年はそれを<幸せ>とよぶ)











2010.07.06

  1. 。Royz +。